PROJECT STORY

プロジェクトストーリー

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兵庫県立はりま姫路総合医療センター<兵庫県最大の中核医療拠点として>

「兵庫県立はりま姫路総合医療センター」 愛称「はり姫」の電気設備工事

県立はりま姫路総合医療センターは、
姫路市の県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院を統合し、播磨姫路エリアにおいて高度専門・急性期医療を提供する兵庫県最大の中核的な総合病院として建設された。
建物規模は、病院棟(地上12階+塔屋2階)及び、放射線治療棟(地上2階)、教育研修棟(地上5階)の3つの建物で構成されており、全て合わせれば延床面積約70,000㎡超の広さがある。診療科35科・病床数736床と県内で最大規模となる。

「我々の仕事~自然災害に対応するBCP対策~」

この建物は巨大な医療施設であり、大容量の電気を使用する為、通常よりも電圧の高い特別高圧受電設備(33,000V)で電気を受け、4,000KVAの特別高圧変圧器(特高トランス)2台で6,600Vに電圧を変換。専用室である電気室内から各建物に電気を送電している。
災害発生時に送電線の停電が発生した際、病院としての機能が停止してしまわないよう、BCP(事業継続計画)対策として、停電が起きた場合でも瞬時に起動する非常用高圧発電機を設置し、60秒以内に建物全体に電気を供給出来るようになっている。
また、UPS(無停電電源装置)も併設し、重要機器(MRI、CT、サーバー等)については、停電する事無く稼働する事が出来る。
非常用高圧発電機は1,500KVAという大型の物を2基設置、その燃料は50,000Lという巨大タンクを2基、地下に設置しており、病院はこの機器を使って、周辺建物が停電になっても独立して電源供給を続け、72時間継続して病院機能を維持出来るように、万全のシステムが整っている。
以上のインフラ構築が今回のプロジェクトにおける、我々の仕事である。正に病院の心臓部であり、言うまでもないことであるが、絶対に失敗は許されない。

「訪れた、最初の課題」

電力会社との受電電圧協議の際に一部変更が判明。
県職員の皆様、設計事務所、製造メーカーと、数多くの関係者が一堂に集まり、解決に向けての協議を慎重に行った。基幹となる部分であるため、通常ではかなり多くの時間が必要となるが、今回は時間をかけるわけにはいかず、迅速かつ正確に解決する事が必須な課題であった。
 解決方法を幾つか提案して関係者間での何度も打ち合わせを行い、電力会社との協議を重ねた結果、技術的・時間的な問題を全てクリアした方法を見出し、最終的に解決する事が出来た。すぐに機器製作に着手し、想定していた時間より早く、工程を前に進める事が出来たことで最初の課題をクリアした。

「時間がない!迫る期日」

プロジェクトが始まった直後、本来はもっと後の工程である“地下タンク設置”が、この建物の特性上、基礎工事着工時には終わっていなければならないことが判明した。しかし、設置するためには関係官庁の許可が必要である。許可を取るためには正確な各種資料・計算書などの提出が必須となった。その量は膨大である。
製造メーカーに資料作成や計算書の提出を依頼するも、地下タンクを設置するための躯体構造計算書や強度計算書は、専門分野外のため思うように作成出来ず、時間だけが過ぎて行った。
間もなく、建築JV副所長の手助けにより、解決への道が開ける。副所長のこれまでの豊富な経験から根拠となる資料・計算書の作成に協力頂き、ようやく設計事務所の承認をとることができた。
その後申請資料をもとに消防署との詳細な打合せを行い、資料の修正、追加を繰り返し、無事に設置許可を取得し、ようやく設置を完了した。出来上がった状況から振り返ると、あのタイミングで地下タンクを設置していなければ後々施工が不可能であった。
本当にギリギリのタイミングであった。

「圧巻の迫力」

このプロジェクト最大のイベントは、特高電気室への特高受電機器、発電機室への発電機搬入であった。今回設置する特高変圧器(特高トランス)は約13t、発電機は約10tであり、当社がこれまでに経験したことが殆どないほど非常に重く、この重さの機器を吊り上げるには超大型220tクレーンが必要であった。
もちろんこの大きさは、日本でもとてもレアなもので、クレーンの手配にはかなりの時間を要した。更に、このクレーンはそのまま単独では道路を走行出来ず、分解して運ぶ必要があった。
道路規制や運行時間制限、重量制限があり、トラック10台に分けて夜間に運搬し、現地で組み立てを行った。搬入日程の確保・調整、絶対安全な機器搬入手順、そして総額費用と、多くの調整を行い、ついに5月連休前に1週間かけて無事機器の搬入据付を終えた。
今、思い返しても、この日程より早くても遅くても搬入不可能であり、我ながらBESTな判断だった。
そして、想像以上に、大型・大重量の特別高圧機器が並んだ電気室・発電機室は圧巻の迫力であった。

「33000Vの特高トランスが、唸る」

工事も完成に近づき、いよいよ特高電気室にて受電する日がやってきた。
電気が入るその瞬間がいつも一番緊張する。『3・2・1・投入』というかけ声と同時に特高変圧器が、低音で重たい独特な唸り音を鳴らした。電気が無事に通った瞬間である。その音を聞き、ようやくやってきた安心感と、とてつもなく大きな達成感を感じた。常時回線、予備回線の2回線を無事に受電し、現場内各所に電気を送った。そして間もなく、建物には徐々にあかりが灯りはじめ、色々な機械が動き出した。
感動の一瞬。

「そして完成へ・・・最高の喜びと誇りを胸に」

プロジェクトでは、多数の協力業者の皆様、応援に来てもらった社員の方々、社内安全・品質パトロール、各種検査に立ち会ってもらった上司、数多くの書類を作成してもらった各拠点の方々など、たくさんの人達に助けられ、支えて頂いた。2021年11月30日に無事、お客さまヘの引渡しを終えることが出来た。
これだけの規模で、特高受電設備という初めての経験をさせてもらい、自分自身の成長にも繋がったこと、そしてエンジニアとして大きな自信ができたことは、私の人生においても言いようのない喜びである。
そして、これから永きにわたり人々の生命を救っていく医療施設という重要な物づくりに携われた事を誇りに思います。
協力頂いた多くのすべての関係者の皆様に感謝致します。